ワキガの科学的メカニズム:2つの汗腺の違いとニオイ発生の仕組み

ワキガってなに? 2026.06.13 読了 約6分 監修 伊藤 伶奈

「お風呂でしっかりワキを洗い、こまめに制汗剤も塗っているのに、なぜかワキガのニオイが消えない…」そんな経験はありませんか?

その原因、実はあなたの努力不足ではなく、「ニオイの根本的なメカニズム」にあります。

本記事では、ワキガが発生する医学的メカニズムについて、汗腺の種類や皮膚常在菌の働きに基づいて詳しく解説します。

SECTION 01ワキガが発生するメカニズムの正体:「アポクリン汗腺からの汗」と「菌」

意外に思われるかもしれませんが、汗そのものはほとんど無臭です。ワキガ特有のニオイは、アポクリン汗腺から分泌される汗が、皮膚表面の常在菌(マイクロバイオーム)によって分解されることで発生します。この皮膚表面での分解プロセスこそが、ワキガのニオイの根本的な原因です。

特にワキガ体質の方のワキでは、ニオイの発生に関与する酵素を持つ菌の割合が高いと考えられています [1]。

ここからは、汗腺の種類やニオイが発生する仕組みについて、順番に解説していきます。

SECTION 022つの汗腺:ニオイの原因となるのはどちらか?

図1. 皮膚に存在する2つの汗腺(エクリン汗腺・アポクリン汗腺)の分布と役割
図1. 皮膚に存在する2つの汗腺(エクリン汗腺・アポクリン汗腺)の分布と役割

ヒトの皮膚には、汗を分泌する「汗腺(かんせん)」が2種類存在します。それぞれ分布場所や役割、分泌される汗の成分が異なります。この中でワキガのニオイに関係しているのが、アポクリン汗腺です。

エクリン汗腺

エクリン汗腺は全身の皮膚表面に広く分布し、主に発汗による体温調節の役割を担います [2]。分泌される汗の主成分は「水分」と「微量の電解質(塩分など)」であり、分泌直後は通常無臭です。そのため、エクリン汗腺からの汗はワキガの直接の原因ではありません。

アポクリン汗腺

アポクリン汗腺は、腋窩(ワキの下)・乳輪周囲・外陰部など、特定の部位にのみ存在する汗腺です。体温調節には関与しません。分泌される汗は、タンパク質、脂質、糖質、アンモニアなどの成分が含まれており、やや粘り気があります [3]。

冒頭でも触れた通り、この汗自体はほとんどニオイがしません。

しかし、汗に含まれるこれらの成分が皮膚常在菌によって分解されることで、ワキガ特有のニオイを発生させるのです。

SECTION 03臭気発生のプロセス:汗が「ワキガ臭」へ変わる3ステップ

アポクリン汗腺から分泌された直後の汗は無臭とされていますが、一体どんなステップを経て独特のニオイへと変化するのでしょうか。

図2. アポクリン汗腺の汗が皮膚常在菌に分解され、ワキガ臭が発生するまでの過程
図2. アポクリン汗腺の汗が皮膚常在菌に分解され、ワキガ臭が発生するまでの過程

ステップ1:成分の分泌

アポクリン汗腺からの汗に含まれる脂質はアミノ酸と結合した状態で皮膚表面へ運ばれる(この段階では、ニオイはない)。

ステップ2:皮膚常在菌による分解

皮膚の表面に存在する常在菌が持つ「特定の酵素」が、汗に含まれる成分を分解する。

ステップ3:臭気物質の生成

分解の結果、アンモニアや揮発性脂肪酸などの揮発性物質が生成される。

図3. 常在菌が汗の成分を分解し、揮発性のニオイ物質が生成される仕組み
図3. 常在菌が汗の成分を分解し、揮発性のニオイ物質が生成される仕組み

また、ワキガ体質の人では、アポクリン汗腺一つひとつが大きく、数自体も多いことが分かっています [4]。汗腺が発達している分、ニオイの元となる汗も多く分泌されるため、よりニオイが強く感じられやすくなるのです。

SECTION 04ワキガの原因を知り、適切な対策へ。自分らしく過ごすための選択肢

今回は、ワキガが発生する医学的なメカニズムについて解説しました。体の仕組みを正しく知ることで、過度な不安を手放し、より適切なケアやクリニックへの相談といった「前向きな選択」ができるようになります。

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出典 / References

  1. [1]Li H, et al. Axillary fossa microbial dysbiosis and its relationship with axillary osmidrosis patients.VIEW →
  2. [2]Chen YL, Kuan WH, Liu CL. Comparative Study of the Composition of Sweat from Eccrine and Apocrine Sweat Glands.VIEW →
  3. [3]Baker LB. Physiology of sweat gland function. Temperature (Austin). 2019;6(3):211-259.VIEW →
  4. [4]Toyoda Y, et al. Earwax, osmidrosis, and breast cancer: why does one SNP (538G>A) in ABCC11 modify them all?VIEW →
伊藤 伶奈
Supervising Doctor
監修:伊藤 伶奈
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医MSc(栄養科学修士)|スウェーデン Karolinska InstitutetPGDip(美容医学修士)|英国 Queen Mary University of London

経歴:東京都出身。2018年東京慈恵会医科大学卒業後、東京大学産婦人科にて研修を行い、産婦人科専門医を取得。現在は都内で産婦人科・美容皮膚科医として臨床に携わる。スウェーデン Karolinska Institutet にて栄養科学、英国 Queen Mary University of London にて美容医学を修め、それぞれ修士号を取得。